ニーズに応えるパイオニア精神が原点

創業時の事務所は社長の自宅車庫の2階

私は天気予報の仕事に着いて42年になります。サラリーマンとして27年勤務し、独立してから15年になります。独立するにはいろいろな理由がありますが、地域のニーズに応えたいというのもそのひとつでした。前の会社ではできなかったテレビ出演の要望に応えたり、小さな講演会なども自分の判断でやることができました。

やったことのないことに挑戦するということにはパイオニア精神が必要だと思います。会社を創業した頃はベンチャー企業として紹介されたものですが、青森県に同業社がなかっただけで技術を売る小さなお天気会社のひとつにすぎなかったのです。ただ、会社設立と同時に気象予報士を目指す若者のために、定期的に勉強会を開いたのが社会貢献の最初の小さな一歩だったかも知れません。

活動の基本はやっぱり防災・減災

地域のために必要だと思って立ち上げた団体には「青森県花粉情報研究会」「青森県気象予報士会」そして「青森県防災士会」などがあります。いずれも頭に青森県とつけたのは、青森県民という意識が強かったからだと思います。防災士会を立ち上げてから8年になりますが、心配していた大震災が起こってここ2年は防災・減災の普及活動から一時的に復旧・復興の活動へ力点が移りました。震災直後から募金活動と被災地への支援物資の運搬、各種団体からの防災教室、中でも防災グッズの紹介や非常食品には関心が集まりました。でも、最近はあっという間に熱がさめつつあり、防災士としては平常時の防災・減災の普及活動が基本で、防災意識を高めることが最大の任務だと再確認しています。

弘前城さくら祭りでの募金活動
陸前高田市へ支援物資を運ぶ防災活動車
表1

自主防災組織率は青森県が全国ワースト2

防災・減災には何といっても防災意識が必要です。住民の防災意識のバロメーターのひとつに自主防災組織率というのがあります。自主防災組織とは、主に町内会や自治会などが母体となって、地域住民が自主的に連帯して防災活動を行う団体のことです。災害対策基本法や国民保護法で地方公共団体には積極的に組織化するよう義務付けられています。

その組織の世帯カバー率を自主防災組織率といって、全国の都道府県別を総務省消防庁から、市町村別を各都道府県から公表されています。表1にあるように青森県は全国46位、全国ワースト2が定位置となっています。この自主防災組織率は全国平均の77.4%に対して青森県は33.4%と極端に低く、青森県で防災活動している私たちには何とも歯がゆいことです。

この状況を深刻に受け止めて、青森県防災士会では昨年度から自主防災組織率の向上を重点課題としてプロジェクトチームで取り組んでいます。東日本大震災以降は防災意識の高まりをみせ、これまでよりは組織率が上昇したものの、まだまだ全国レベルとは大きな開きとなっています。私個人としては住民意識を高めるためにはまず自治体の幹部や議員さん方の意識改革が必要だと感じています。

県民の代表意見は自治体を動かす

青森県防災士会の活動は徐々に自治体から認められるようになり、県の総合計画審議会や県の防災会議のメンバーに委嘱されるようになりました。

青森県に自主防災組織率が全国ワースト2ということを発言し続けたら、今年度は自主防災組織の向上と防災研修センターの改修に合わせて1億円超の予算が計上されることとなりました。また、青森市役所は耐震性や老朽化のため建て替えることになっていますが、庁舎整備基本計画にも私たちの意見具申を求められるようにもなりました。

さらに、自主防災組織率の極端に低い市町村の組長さんとも直に意見交換できる環境となってきました。

東日本大震災での活動から社会貢献へ

テレビニュースに流れたランドセルの運搬

東日本大震災の直後は募金活動や被災地への物資搬送などをしましたが、他団体と連携して行った被災小学生へのランドセルを送る活動では、これまでにない達成感と喜びが感じられました。目標のランドセル1000個がなんと5000個も集まったのにはとても驚きました。

東日本大震災から1年後の2012年3月には初めて社会貢献学会のボランティアバスに参加することになりました。青森からは防災士会の会員6名が参加しましたが、そのうち4名はソシエーターです。私たちは新幹線で青森をたち仙台駅でボランティアバスに合流しました。1日目は仙台市内の避難所で募金の寄贈をした後、前日に降った雪かたずけをし、被災者の皆さんと交流をしました。2日目は2班に分かれて、樹木の根っこの撤去といちご農家のビニールハウスの整備のお手伝いをしました。

避難所への募金の寄贈
避難所の雪かたずけ
いちご農家のビニールハウス

学術と市民活動が両輪

社会貢献学会の渡辺会長はホームページのあいさつで「社会貢献学会は、学術と市民活動を両輪とする新しいタイプの学会」と述べています。私の大好きなフレーズです。これまで立ち上げた「気象予報士会は」学術の会、「防災士会」は市民活動の会でしたから、私としてはまさに新しいタイプの会として新鮮な気持ちで参画することができました。

さて、学会も設立から2年半が過ぎましたが両輪はうまく回っているでしょうか。私には市民活動の方が少し回転が鈍いように感じられます。また、ソシエーターの認証数もまだまだ少ないように感じています。TKKの3大学が連携して始まった社会貢献の輪を全国に広げるために、学術の方は大学にお願いするとして、市民活動は市民レベルから広げるべきだと考えるようになりました。そのためには身近な所に拠点となる場が必要です。本部事務局が用意する活動に参加するだけでなく、地元でも大いに社会貢献活動をしたいわけです。

全国初の青森支部の設立

8年にわたって青森県防災士会をけん引してきた私は、この春の総会での代表理事の退任を契機に、社会貢献学会の活動に全力をあげることとしました。

日頃から全社をあげて社会貢献活動をするとともに防災士会の活動にも理解を示し、防災活動車を寄贈して頂いた会社の専務さんに支部長を引き受けて頂くことができたことから、青森に支部を設けることができないか事務局に相談しました。

6月1日に社会貢献学会青森支部の設立準備会を開催し、本部理事会に諮ったところ、7月12日の理事会に於いて全国初の支部設立が了承されました。

それまでソシエーター10名に市民会員2名だった青森県内の学会メンバーが、正会員1名・市民会員14名まで増え、8月7日に青森支部の設立総会が開催される運びとなりました。

総会当日は参議院議員で元総務副大臣の代理として夫人(当会新入会員)にご臨席お願いして、下の写真のメンバーで総会が執り行われました。議事は議長に支部長予定者の小笠原要助氏(トヨタレンタリース青森専務取締役)を選任し、報告事項・提案事項が審議され、役員選任も含めすべて承認されて成功裏に終了し、青森支部は船出となりました。

設立総会に出席した会員の集合写真
地元紙に掲載された支部設立の記事

青森支部の活動開始

ゼロからのスタートですから、まずは必要なものの優先順位を決めて物からそろえて行きましたる印鑑の作製・口座の開設・封筒の印刷・リーフレットの作成へと進みました。

青森支部のリーフレット (表)
青森支部のリーフレット (裏)
会報 「ソシエーター」 の第1号

また、リーフレットのほかにも学会のPRには会報が必要と考え、早速総会の模様を会報で会員などに報告することにしました。会報のタイトルはなじみのうすい「ソシエーター」をそのままつけることにしました。会報は今後も不定期でどんどん発行する予定です。

目標は100名と1000社

社会貢献学会青森支部は歩き出しました。活動には活動資金がどうしても必要です。支部構想の段階から社会貢献は企業や団体と連携することが不可欠であり、企業などの持っている力も借りることが有意義であると考えていました。

今年度の予算は控えめに作成(会費40名・賛助会費20社)してありますが、とりあえずは会員50名・賛助会員100社を念頭に置いています。さらに、来年度以降は目標として会員100名・賛助会員1000社の大野望を考えています。

青森のブランドと企業のステータスへ

私は昨年から青森県の総合計画審議会の委員をしていますが、県の次年度以降の重点事業に「青森のブランド化」が提言書に盛り込まれました。近い将来、社会貢献という文化が青森のブランドの仲間入りするくらいの意気込みで活動を進めたいと思っています。

また、青森県内の中小企業の経営者と連携を強め、社会貢献学会の称号が地域貢献・社会貢献に寄与している企業や団体のステータスにまでなるような夢を描いています。

社会貢献学会 青森支部 発起人

民間気象会社 アップルウェザー 社長 工藤 淳